南の島で(2)
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マザーテレサ孤児院は2歳頃までの子がいられる施設で、
数ヶ月の赤ん坊も走り回るちびっこも、
たまらなく可愛く愛おしかった。
産まれてすぐに、親がいない苦境に立たされた子たち。
不条理を思う気持ちや憐れみもあったが、
何より、こんなに可愛い子たちを
「この子が世界で一番」と愛してあげられる人がいないなんて、
なんて勿体ないことなんだろう、と思った。
もしかして、裕福な大人たちは、
子供を産み育てるよりやるべき事があるんじゃないか?
施設に行くと、いつも誰かを抱っこした。
子どもたちは本能で肌のふれ合いを、愛を求めていた。
離れようとするとぐずる子もいたが、
そんなときおでこにキスをしてあげると落ち着いた。
キスには力があるのだと、初めて実感した。
ただの一度も笑うことがない、
感情をどこかへ置いてきたようなあの子は、
どうしたら心を解いてくれるだろう。
逆にエネルギーが有り余ったやんちゃな悪ガキには、
良いことと悪いことをどうやったら伝えられるだろう。
彼らを前にしていると、
自分のことを考えている暇などなかった。
集落への訪問では、様々な“生活”を見た。
山の中に建てられた家々や街の古い墓地などに住む、
私たちには想像もつかないくらいに貧しい人々。
ある集落では、ズレたチューニングのボロボロのギターで
たった一つの曲を弾き歌う少女。
チューニングを直してあげたら、ありがとうと感激していた。
錆びた弦が切れたら替えがないだろうから、
一音下げになったけれど。
ある集落では、内気な少女が村案内の間静かに私の傍らを歩いていて、
一緒に行こうと手を差し伸べたら嬉しそうにずっと繋いでいた。
その子は村の子どもたちが楽しそうに集まっているときでも寄っていかないので、
私はもしかしたら気を遣われているのかもしれないと思い
「あの中にあなたの友達はいる?」と尋ねた。
誰かを指差したら、その先の子の所へ一緒に行ってあげるつもりだった。
しかし彼女は「いない」と言った。
詳しい事情は訊かなかったが、
ここにいる間私はこの子の隣にいようと決めた。
彼女は整った可愛らしい顔立ちで、
強面の父親の前だと少し怯えたような顔を、
小さな弟の前だとしゃんと明るい顔をした。
日を空けての訪問でも彼女は私を探してくれたし、
私もまた彼女を探した。
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