黒木ちひろ

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Chapter 1 - Heart

慣性の法則

 小雨降る中
 息が白いことに気付き
 耳を塞いで
 帰り路を外れた


地球が動きを止めたら 人はみんな死ぬでしょう
こんな涙の溢れる夜に
私も足を止めたら 死ねるんじゃないかと思うの


 交互に前へ動く足

 右 左 右 左

 南へ向かってみるけれど
 この足取りじゃ海はとても遠い


誰の名前も呼びたくないの
だって涙の理由を説明できない
自分の命の全てが悲しいなんて
よくあることよ


 右 左 右 左


あそこに大きなマンションがあるでしょう
あの箱の一つ一つに人が住んでるんだって
なのに私は独り
こんな私のこと背負えるのは 私しかいないのよ


 右 左 右 左


初めから何も無かったことに
生まれることのなかった歌たちは
生まれないままに


 右 左 右 左


私の知らないところで
私じゃない何かになった私を
私が殺すのは罪でしょうね


 右 左 右 左

 やがて前も後ろも見慣れぬ景色になった頃
 涙も止まった
 濡れた指先がひどく冷たいことに気付く
 猫と布団に埋もれたくなった
 帰ろう


そんなものよ、そんなもの
今だけやり過ごせばまた
心は生きようとするの


 右 左 右 左

今日も終わらなかった

明日も生きるために 帰らなくちゃ

 右 左 右 左

始まってしまったことが かなしい

この足が完全に止まる瞬間が こわいの

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