黒木ちひろ

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Chapter 1 - Heart

HURT(2) 「傷」

インスパイアというのだろうか、
私はたまに読んだ小説の内容を詞に取り入れることがある。

今までの楽曲で言うと、“兎の毛皮”がそうだ。
ヨースタイン・ゴルデル著、『ソフィーの世界』の中の
兎の例え話をモチーフにしている。
その上に書かれているのは、結局私の気持ちなわけだけれど。


「HURT」は、名詞だと傷とか怪我とかいう意味になる(らしい)。
この曲のモチーフは、乙一作、『傷』という短編である。

人が負った傷を、その人に触れることによって
自分の体に移すことができるという能力を持った少年の話。

数年前乙一ワールドにどっぷりハマり、
読めるだけ読み漁ってた頃にこの話も読んだのだと思う。
初めて読んだときのことを憶えてはいないし、
最近読み返すまで登場人物や詳しい展開のことも
よく憶えていなかったけれど、
この少年の能力のことは事ある毎に頭に甦った。


心の底から、この能力が欲しいと願った。
誰かが泣くくらいなら、ゴミみたいな私が泣けばいいと思った。
自分をいらないと思う度、
それならせめて誰かの傷を肩代わりすることによって
少しでも価値が欲しかった。

この少年は、病院で無差別に傷を引き受けて自殺をしようとする。
なんて理想的な自殺だろう、と思った。


だけどもし叶うなら、
私が本当に引き受けたいのは体じゃなく心の傷だ。
人が優しくある為には多少の傷も必要だろうとか、
そもそもそんなこと現実でできるはずないだろうとか、
考えてみれば馬鹿げた話なのだけれど、
現実を離れていくならば、現実的でない話をして何が悪い。

優しい人たちが背負った重たいものを、
降ろしてほしい。笑ってほしい。
もしも私が死ぬのなら、
代わりに私の背に乗せて、
一緒に葬って。


曲のタイトルは、「小さな終わり」とか「最後のお願い」とか、
そのまま「遺書」だとか、それらしいものもあったけれど、
一番死を連想させない、そして小説へのリスペクトも込めて
「HURT」にした。

私にとって、「遺書」なこの曲、
誰かにとってそうじゃなくてもいいんだ。
ただのお別れの曲とか、何となく切ない曲とか、
私から生まれ落ちて、あとは好きに聴いてもらえたら嬉しい。


だから本来はこんなに長々と書くべきでもないんだろうけど、
語りすぎてしまったね。
それこそ、遺していっても解るくらいに。


だけど本当に遺さなければいけないときは、遥か先であることを願うよ。
今はまだ、傷を背負っていながらでも。

貴方も私も

生きて。

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